告白の時
(心のそこから好き)。一度きりのチャンス。告白。
実を言えば、会う前の彼の想像図というのは、私の中でかなり膨らんでいた。
これは誰でもそうだと思うけれど、まだ一度も会ったことがない相手の事は、あれこれと想像を巡らせるものだろう。
私の場合、想像図というより自分勝手な理想像を打ち立てていた。
何しろ、声と話し方しか知らないのだから。
外見はこんな感じ、こんな服を着ていて、こんな風に振る舞うのかな。
私の想像力は、とどまるところを知らなかった。
その為に、逆に会う直前には(もしも…)という悪い思いで破裂しそうだったのだろう。
初めて会った日から、私の中での彼の占める範囲というのが日に日に大きくなっていった。
今まで2次元の存在だったものが、急に実体を伴った一人の男性となったのだから無理もない。
この時点で、私の気持ちははっきりしていた。
後は、彼が私のことをどう思っているか、だけなのだが…。
彼の私への接し方から、恐らく両思いではないか、という気はしていた。
そして驚くことに、私は自分から気持ちを告白する、という行動に出たのである。
いつもの私なら、とてもではないが「そんな気がする」だけでは行動を起こせない。
自分が傷つくのが怖くて、今まで何度も、自分の気持ちを飲み込んできた。
当然だが、言わなければ思いは伝わらない。
そう頭では理解していても、心は傷つくのを嫌がる。
けれども。
今回の相手は、自分から言わなければ決して答えてはくれないだろう。
それはつまり、どんな事でも伝えれば必ず、真剣に結果を返してくれるということ。
たとえ、返事が「No」であろうとも。
チャンスは一度切り。
逃したら、後はない。
1999年3月12日、深夜。
機会は巡ってきた。
それは、いつもの様にICQで話している時だった。
何を話していたのかはほとんど覚えていない。
ただ、今でも、自分の打った文字は鮮明に覚えている。
「あたし、あなたの事が好き」
思い切ってでも、覚悟を決めてでもない。
チャンスが来たから、機会を逃すわけに行かないから、反射的に告白してしまった、そんな感じ。
気が付いたら、勝手に手がタイピングしていた。
しばらくICQでの会話が止まる。
(ネット、落ちちゃったかな。やっぱり、気を悪くしたのかも)
言わなきゃ良かった、そう後悔し始めたときだった。
突然、私の携帯電話の着信メロディが鳴り響いた。
画面には、彼のHNが表示されている。
まさか直接返事が来るとは予想していなかった…。
半ば呆然としながら慌てて通話ボタンを押したものの、何を話していいのか分からない。
彼の気持ちが聞ける…それだけが、心の中に響いていた。