贈り物

妹?それとも一人の女性?。躊躇と喜びと決心。素晴らしい贈り物。


通話状態の携帯電話を持ったまま、途方にくれる。
(まさか、直接くるなんて)
面と向かってではないけれど…いや、いっそ面と向かっての方が良かった。
電話は、苦手。
彼となら電話で話すのはまあ平気、とはいっても、やはり限度がある。
しかも内容が内容なだけに、どうしていいのか分からない。

とにかく、何か話さないと。
そう思って慌てて耳に携帯電話を押し当てる。
「…もしもし?」
『ああ、俺。さっきの、まぁ返事だけどさ…』
聞きなれた彼の声。
いつもなら心地よく響くバリトンが、今日は何だか息苦しい。
それは居心地が悪いせいなのか、単に私の動悸が激しいだけなのか。

彼から見た私って、「妹」なんだろうか?
それとも…一人の女性としてみてくれていたら、嬉しいのに。

何を話したのか、よく覚えていない。
ただ、彼は返事をする前にまず、自分の事を語ったような記憶がある。

…お前、たばこ嫌いだろ?
俺、ヘビー・スモーカーだぞ。
すげえわがままだし、金銭感覚もないな。
この歳でまだ学生だし、んだから自活力もねえぞ。
おまけに、気が短いし。
付き合う奴の苦労は目に見えてるな。

そして、その後こう言った。
私が打った告白の言葉と同じぐらい、これははっきり覚えている。

『それでもよければ、俺と付き合うか?』

OKもらった!後は私が「うん」と言いさえすればいい。
なのに、何故かここで素直になれない。

そう、後は私が「うん」と一言、告げればいいのだ。
なのに、余りにも早すぎる展開に、私は少しパニックを起こしていたらしい。
待望の彼からの色よい返事なのに、思わずこう答えていた。

「ちょっとまって、明日まで待って。
明日まで少し、考えさせて…」

ん、分かった、と彼は言ってくれた。
ゆっくり考えな、焦る事はないぞ、と。

翌日。
土曜日だが、会社へ行かねばならない。
仕事中ずっと、夜中の会話の事ばかり考えていた。
昨日の夜はあんなに悩んでいたのに、一晩明けたら驚くほど気分はすっきりしている。
おそらく、はたから見たら「おかしい」と思われたことだろう。
それ程、一日中にやにやしっぱなしだった。
(彼氏が出来るんだ)
嬉しくて嬉しくて、仕方なかった。

決心。
(よし、今日の夜、ちゃんと返事しよう。付き合ってくださいって、言おう)

家に帰る。
夜、ネットに繋ぐ。
彼がいるのを確かめると、すぐ電話をした。

「あのね、昨日の返事なんだけどね。あたしと…付き合ってください」
どきどきしながら言った。
もしも、彼の気が変わっていたら、どうしよう。

けれど、そんな事はなかった。
『ん、よかった。じゃ、こういう事はちゃんとやんなくちゃな』
そういって彼は、次の言葉を私にくれた。
『どうか、俺の彼女になってください』
真剣な彼の声に、思わずその場で正座をしてしまう私。
そして、こう返した。
「どうか、私の彼氏になってください」
…2人で、くすくす笑いあう。

時間は折りしも、3月14日−そう、ホワイト・デーに変わろうかという頃。
私は「彼自身」という、本当に素晴らしいバレンタインデーのお返しを貰った。

<了>


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