2001.6.9(Sat)その3

オカルト〜3〜

テレビの電源が消える事件から10分ほどもしたでしょうか。
すでにこの時点ではゆみな&M嬢の不可解な気分はどこかへ消え、
キャーキャーとはしゃぎながらテレビを見入っていました。

と…部屋の外、廊下の向こうの方で誰かが騒いでいます。
続いてどたどた廊下を走る音。
どうやら、こちらの方へ近づいてきているようです。
そして…

「がらっ」

っと大きな音をたて、突然、部屋の扉が開きました。
「!!!」
そこに立っていたのは…、

真っ青な顔をした…

どこかに行っていた、M君でした。

思わず止めた息を吐き出す、ゆみな&M嬢。
肩で息をしながら、M君が部屋に入ってきました。
「…何があったの、そんなに慌てて」

ここから先はM君が語ったお話です。
(言葉の細かい部分は覚えていないので適当ですが、
内容の脚色は一切していません)

「この宿、下の階なかっただろ。
でもあるんだよ。
今まで…そこにいた。

今日の昼練のあと、他の大学の後輩が見つけたんだ、
1階まで降りられるエレベーター。
この部屋の前の廊下のずーっと奥に、今は使われてなさそうなのが。
廊下の先、変な風に曲がってただろ?
あの先にあるんだよ、エレベーターが。

で、さっき晩飯食ってから2人で行ってみたんだ。
まず、2階で止めた。
エレベーターのドアが開くと、目の前に鉄格子があって、
向こうに降りられないようになってるんだ。
鉄格子の向こうは真っ暗闇でひんやりしてて、これはやばいと思って。
いったん出直すことにした。

いかにも幽霊かなにかいそうで、
“霊感がある”って言うRちゃんと、水晶のペンダントしてるKがいたから
そいつらを引っ張ってきて、もう一度行ってみた。
まず2階で止めて…ドアが開いた瞬間、Rちゃんが「やだ」って一言。
何がやなのか、聞いても答えない。
仕方ないからそのままドアを閉めて1階に降りる事にした。

1階も、ドアの向こうに無限にも思える闇が広がってて…。
鉄格子とか無くて、すぐに出られた。
エレベーターが閉まると真っ暗になるのは分かってたから、
俺が持ってたライターの明かりを点けた。
ないよりまし、っていう感じだったけど、とにかく明かりがあるってことで。
真っ暗だから迷わないように、エレベーターから真直ぐ進む事にしたんだ。
幸い、エレベーターの表示板が灯ってるから、
真直ぐ進めばすぐ戻ってこられたし。
みんな、ピクニック気分でいた。

進むと左右に部屋があるのが分かってさ。
最初の部屋を覗いてみたんだけど…何もない部屋。
カウンターとガス台みたいなのがあって、台所か厨房っぽかった。
他の部屋も似たり寄ったり。
ただ、気味悪い事に、壁っちゅう壁が真っ黒にすすけてるんだわ。
壁が崩れ落ちてる所もあったし。
『火事でもあって、人が死んだとか』
そんな話を始めたら、とたんに怖くなってきた。

『何かやだよ、寒いしさぁ、もー帰ろうよ』
Kがそう呟いた時だった。
Rちゃんが突然、倒れたんだよ。
俺たち全員パニック起しちゃって…。
後輩がRちゃんを抱えて、Kは水晶のペンダント握り締めて…。
俺はライターの火を振りかざして、みんな一目散にエレベーターの表示灯めがけて走った。

上に行くボタンを連打した。
エレベーターはまだ1階で止まってて、すぐにドアも開いた。
なだれ込むように全員飛び込むと、
すぐに誰かがドアを閉めて部屋のある階のボタンを押したんだ。
順調にエレベーターは上昇したけど、すげー長い時間に思えた。
いらいらして腕時計見たんだ。

8時30分過ぎだった。


その間、後輩が必死でRちゃんのほっぺた叩いて…Rちゃんもやっと気がついて。
何があったのか、何か『見た』のか聞いたら
「見てないけど、何かいて…乗っかられた」っていうんだよ。
ここに近づかないで欲しいっていう、念を放ってた何かがいたらしい。
「その念を、思い切りかぶっちゃったみたい」

エレベーターが無事この階に着いて、
RちゃんとKは後輩の付き添いでついさっき自分の部屋に戻ったよ。
で、俺は怖くてさぁ、誰かに話したくて、
お前らの部屋が一番近かったから飛び込んだんだけど」

口をあんぐり開けてM君の話に聞き入っていたゆみな&M嬢は
思わず顔を見合わせました。
「…8時30分?本当に?」
うなずくM君に向かって、“テレビ事件”の顛末を聞かせました。

    2つの事柄のあいだに関連性はあるのかないのか。
偶発的なことだとは思うのですが。
今思い出しても、首をひねる出来事でした。

「3階より下の階が『ない』ホテル」は実在します。
今もまだ鬼怒川にあると思います…。

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